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怒らんかい、花咲か爺さん。ひんがら読み。

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某所より舞い込んできた古書。うつくしい装丁にうっとり。
カチカチ山と花咲爺が収められている武者小路実篤が文で岸田劉生が挿絵を描いている1917年(大正6年)に出た本。
布張りの表紙にうっとりしているだけでもよかったのですが、いちおう文字のある本なので読んでみました。

誰でも知っている花咲爺の話ですが、読んでいるとなんだか腹が立ってきました。

この爺さん、隣の欲ばり爺さんに自分ちの大事な犬を殺されても、また、大事な臼を燃やされても、しかたがないさと言うだけなのですね。
もっと怒らなければだめですよと中兵衛さんという人が意見しても怒ってみても始まりませんからね、とか言う。

どうもここでは怒るということが悪で怒らないといことが善のように書いてある。
花咲か爺さんは、結局自分では怒りを抑圧し続け、最終的には殿さまに仇を取ってもらうというストーリー。
子どもの頃からよく知っている話だが、こういうところに為政者が民衆を操作する罠が仕掛けられていた、と思った。
無垢な子どもは怒っている欲ばりな爺さんは悪で、何をされても決して怒らない花咲か爺さんを善とまんまと教育された。

どうもこの善人の花咲か爺さんの行動を見ているとムカムカ腹が立ってくる。
おめおめと欲張りの隣人の家に貸し出された犬も気の毒である。この犬に対して花咲か爺さんは決して善ではないのではないか。
外に対してはいかにも善人に見えるが、内なる犬にとっては果たしていい人だっただろうか。けなげな犬を見殺しにしている。
自分は善人を全うし、殿さまという権力者に裁きをゆだねるという人頼みのやり方も気に喰わぬ。

怒ってもしかたがない、などという考えは今も連きんとこの国の中に生きている。原発バクハツでほうしゃのー撒き散らかされてもしかりである。
それどころか食べて応援しようとか訳の分からんことがまかり通るこの国の元は案外こういう教育がなん世代にも渡って浸透してきた結果なのではないかと確信したのであった。
Commented by mican-lingo at 2013-06-27 23:43
中兵衛という人がいたとは知らなかったです。

わたしも、いいかげんぼおっとした子供だったけど、
この正直じいさんが、ほいほいと何度も貸し出すのが
どうしても納得できなかったですわ。
Commented by daikatoti at 2013-06-28 05:52
★micanさん 花咲か爺さんって民話なんですよね、私も中兵衛という人が出てくるのは知りませんでしたが、これは脚色なんでしょうかね。
正兵衛と欲兵衛と中兵衛が出てきてですね、つい「中庸の美徳」なんちゅう言葉を思い出したんですけどね、何事も中くらいが一番って思いましたね。
適当に欲があって、適当に正直で。
欲べいや正べいみたいに極端に走る人間は苦手どす。

何度も貸し出して欲べいの言いなりになってるのはもっと書かれていない事情とかもあるんでしょうかね。水争い的なものもあるとか調べると書いてありましたが。
どうしようもない我慢を強いられた庶民の希望の星だったのかもしれませんがね、この花咲か爺さん。
Commented by Kcouscous at 2013-06-28 10:58
ははは。totiさんの読み取りかたは面白い^^ その怒りもまったく正当だと思います。
昔ばなしって、伝えられてきたおおまかな筋はあって、これは結局は正直者が幸せになって欲張りは罰があたるぞという教訓話なんでしょうが、書く人によっていろんなヴァージョンがありますね。この武者小路ヴァージョンにはブラックユーモアを感じます。正兵衛さんは凡人には理解できないキリストみたいでしょう。絵もキリストみたいだし^^
自分で「私は自惚れが強すぎるのかもしれない」と言ってるのが面白いし、殿さまが「わしには欲兵衛の気持ちのほうがよくわかる」と言ってるのも面白い。すごく皮肉に満ち満ちていて、私はひょっとしてキリスト批判かなとか思って読みました^^
Commented by 魔女メグ at 2013-06-28 19:10
装丁の美しい本、確かに今どき無いわね。
高くて買った事が無い、だけかもしれないか?
我が家にある、ハトロン紙に包まれた本は、芥川賞全集が最後だわ。
この本は面白かった。その時々の芥川賞選者(有名作家達)が褒めたり酷評していたり、いやはや面白いのよ。
Commented by daikatoti at 2013-06-29 07:11
★kcouscousさん  キリスト批判とは気が付かなかった!
挿絵がそういえば日本のおとぎ話にしては妙です。
カチカチ山もこんなに残酷な話だったんですね。
そういえば子どもの頃聞いたこの話は、このお話通りにおばあさんを汁にして食べてしまうんでした。
狸汁とかおばあさん汁ってどんな味なんだろうと思ったものでした。
鯉こくというのを食べるとなんとなく狸汁ってこんなのかなと思いました。
今は残酷過ぎるので話を柔らかくしてあるらしいですね。
グリム童話といい、昔のものってストレートに残酷、でもそれを普通に受け入れていた不思議。
この時代に書かれたものだからこその面白さがありますね!
Commented by daikatoti at 2013-06-29 07:14
★魔女メグさん  へぇ〜、面白そうじゃありませんか。
誉めたり酷評したりとかの、そういうのって月日が経つほどおもしろくなっていくよね。
今、本の表紙派手なのが多いよね。売れなきゃいけないものね。
Commented by at 2013-07-11 11:07
あぁ、やっぱり1日1回はtotiさんとこにお邪魔しないと、なんだか随分人生損をしてしまうな~、なんて思ったりして。
どのお話もすとんすとんと腑に落ちる。
totiさんありがとう♪
最近、バイト?始めましてん。
totiさん好みの古民家カフェではなかろうかと。
いつかチャンスがありましたらゼヒ。
Commented by daikatoti at 2013-07-12 06:07
★松さん(松たか子さんじゃないよね^^、松ぼっくり嬢だよね、へへ)
どうもどうも、そんなに持ち上げていただいてどーしましょ^^。
おや、バイトですか。どうりで更新が途絶えてると思った。
あら、秋になって涼しくなってきたら伺いたいものですわ。民家カフェですか、おもしろそう、そこでバイトしてるのね。
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by daikatoti | 2013-06-27 06:23 | 日々のこと | Comments(8)

毎日綴る絵日記帳    まるかバツか答えがふたつしかないって オカシイ


by toti
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